藤川阪神の本質は守備的野球である。
これは岡田路線がそのまま、継承されていて、藤川自身が投手だったから、当然投手に対する評価は厳しい。しかし、これまでもタイガーズの投手陣はそれなりに力のある投手が揃っていて、現在の先発陣は、昨年とは才木、村上、大竹が同じ。ここへ伊藤、伊原、デュプランティエが加わった、伊藤は復活したので、したがって先発陣にはさらに二人の西、ビーズリー、復活途中の高橋遙人、中継ぎになったが門別も次をしっかり狙っている。
豊富な投手陣で失点を少なくして勝つ野球だから、当然守りにも力を入れる。
ショートについては、昨年から藤川は小幡にすることを心づもりとしては置いていたと思う。問題は打力で、木浪と比べればまだまだ、というところはあったのだが、その木浪が調子を落としてしまえば、打力が変わらないのなら、守備範囲が広い小幡が良いということになる。小幡は木浪に比べて足が速い。阪神のショートは足が速くないといけないところがある。それは近本の方に原因がある。
近本は走攻守に揃った選手であることは疑う余地はないが、しかし、肩だけは故障してしまって、強い方ではない。したがって中継のショートがなるべく、近本に寄り添い、さらにバックホームしなければならなかった。
木浪も肩は悪いほうではないし、近本に寄り添ってきたわけだが、しかし、小幡の方がさらに速く近本に近づけるメリットがある。
しかし、肩が弱いのはもう一人いた。
それが前川である。2025年レフトのスターターは前川がとった。しかし、前川もまた守備には難があり、かつ肩が弱い。そこをカバーする打力が魅力なのだが、5月以降調子を落とした。それで、彼は二軍落ちする。ただ、前川を二軍落ちさせるにあたって、ひとつのプランが浮上していた。
それが、佐藤のライトである。佐藤をライトに、森下をレフトにすれば、二人とも肩は強いから、両翼のバックホームの力は強くなる。つまり守りが一段階上がる。さらに小幡がフォールする相手が近本だけになるから、それもまた心強い。
一方サードには、人材がいる。
新外国人のヘルナンデス、今ファームにいるが渡邊諒、代打の切り札である糸原、さらに伏兵熊谷も控えている。そしてもうひとつオプションがあった。
それが木浪だ。
木浪の打力が上がれば、サードに、というのはひとつのオプションになる。なので、交流戦の途中、木浪をファームに落とした、木浪は最早打力が上がってこない限り上はないよ、と言われているようなものだが、しかし、それでもまだ活きる目はある。
が、ここに伏兵が現れた。
同じく下に落とされていた嶋田だ。5月中旬から調子を上げ、ファームの打率が4割に届きそうだった。元々選球眼は良い。足もある。肩も強い。ただ、打力がもうひとつ。嶋田は近本が入る前は、有力なセンターだったと思う。が、近本が入って、彼の行き場はなくなっていた。
一方サードは交流戦で日々選手が代わったが、今ひとつ決まらなかった。本来の候補である木浪もダメだが、それぞれチャンスが与えられていても、抜群、というところまではいかない。ファームからすでに上がってきた前川も、代打では今ひとつ。
しかし、嶋田が元気なら、サードを佐藤にして、レフトを前川にし、さらに後から嶋田を出せば良い、ということになる。しかも最後の1打席ぐらい嶋田に回るだろうから、そこで何らかチャンスが生まれれば、嶋田がレギュラーになる可能性もあった。
ということで、佐藤はサードに戻ってきた。
そして、7月3日、豊田が2試合連続でレギュラーのレフトを守った。彼は阪神では貴重な右バッターで、まあ、それなりに守れもする。その彼がサヨナラのヒーローとなった。
豊田は貴重な右打者だ。調子を落としている原口の代わりに右の代打で使っていた。巨人3連戦のうち、うしろ2試合は左投手。豊田にチャンスが回ってきた。
こうやっていろいろヒーローが出てくるチームは強い。
いろいろ布石はあるのだが、野球はだから面白い。